園長からのひとこと【2024/1】

新しい年が明けて、早くも一ヶ月が過ぎようとしています。今年は、お正月から能登半島地震が起こり、日本中が驚きと悲しみに包まれる中で始まりました。時間が経つにつれ、その被害の大きさと悲惨さが明らかになっています。

仏教の修行の一つに「ダーナ」と呼ばれるものがあります。日本では「布施(ふせ)」という言葉で伝わっているものです。布施という行為は、「苦しみを抱える人のために、自分が大切にしているものを手放し、幸せを分け与えていく」という意味があります。布施の行いの中には、募金のような財施という行いもありますが、その他にも、笑顔を見せる和顔施や好ましい眼差しを送る眼施、また、座る場所を譲る床座施など、私達が普段気をつけて行うことができる些細な行為もたくさん説かれています。

地震から四日目、ボランティアによる炊き出しに涙を流す被災者の姿が報道されていました。苦しくてどうしようもない時、人の些細な優しさが、その苦しい心を大きく癒やしていくのでしょう。一人一人、できることには限りがありますが、私達も、人の痛みに無関心になるのではなく、一緒に心を痛めながら、自分にできる些細な優しさを大切にしていきたいですね。

保育園では、発表会の練習が進んでいます。一生懸命に取り組む子ども達の姿には、いつも大きな感動を頂いています。人数制限のない発表会は、実に四年ぶりになります。子どもも保護者も職員も、みんなが笑顔になれる素敵な発表会になると思っています。ぜひ、子ども達に温かい応援をよろしくお願いします。

2024/1/29

 

 

2024-01-29

園長からのひとこと【2023/12】

年末の慌ただしさが、身に染みる季節になりました。今年も終わりを迎えようとしています。

さて、ちょうど一年前に、新園舎建築工事に伴い、園庭のクスノキが伐採されました。大きく枝を張り、子ども達に素敵な木陰を作ってくれたクスノキは、嘉川保育園のシンボルツリーでした。一年前、重機によって、大きな枝がもぎ取られていく様子を、子ども達と一緒に、寂しい気持ちで眺めたことを思い出します。

この度、そのクスノキが、素敵なベンチになって、嘉川保育園に帰ってきてくれました。嘉川保育園から徒歩2分程度の場所にあるシーティング工房Haruの社長さんが、新園舎完成の御祝に、手作りでプレゼントしてくださいました。社長さん自身も卒園児です。昨年まで園庭の木陰となって子ども達を支えてくれたクスノキが、これからは、体を休めるベンチとなって子ども達を支えてくれます。

無残に伐採されたクスノキの命が、無駄にならなかったことにほっとしています。また、形を変えながらも支えてくれる、命のありがたさも感じます。私達は、日々、様々な命の犠牲の上に生かされて生きています。その犠牲をしょうがないと済ますのではなく、なんとか無駄にしないように心がけるところに、人間らしさがあるのでしょう。それは、ありがとうの思いをたくさん持ちながら、日々過ごすことに他なりません。

今年も、世界に目を向けると、戦争によってたくさんの人々の悲しみが、世界を満たした一年でした。来年は、笑顔溢れる一年になることを願わずにはおれません。お互いに、様々なものに支えられている身のありがたさを味わい、一年の終わりを温かい感謝の想いの中で大切に迎えていきたいですね。

2023/12/22

 

 

2023-12-22

園長からのひとこと【2023/12】

短い秋が終わりに近づき、急に冬の気配を感じるようになりました。感染症の流行も心配されます。体調に気をつけながら、寒い冬の季節を楽しみましょう。

さて、先日、年長組の子ども達が、新園舎の床に使われている木について尋ねてくれました。様々な木を紹介する絵本を見て、興味を持ってくれたようでした。

新園舎の床に使用されている木は、楢(なら)の木です。一般的には、ドングリが実る木として知られています。設計監理を担当してくださった日比野設計社が、子どもの心情に最も安心感と居心地の良さを感じさせる資材を、実証実験を重ねて選んでくださったものです。

木というのは、古来より人の生活に欠かせないものでした。しかし、現在、人の生活が優先されすぎたことにより、世界中で森林破壊が問題になっています。今も、一週間ごとに東京都と同じ広さの森林が失われ続けているそうです。森林が失われていくと、多くの野生動物が絶滅し、気候変動が拡大していきます。そして、それは、人の生活を大きく脅かしていくことになるのです。命は、大きな繋がりの中にあります。人だけの都合を貪り、他の命に対する思いやりを失うと、その人もまた苦しんでいくことになるのです。

多くの命が支え合う繋がりの中に、私達は、生かされて生きています。人以外の命は、人の都合を叶えるための道具ではありません。保育園の床になってくださった楢の木も、掛け替えのなさをもって一生懸命生きた命なのです。そう思うと、木の床もまた、大切にさせていただかなければなりません。

まもなく、どんな命も同じく尊いことを教えてくださったお釈迦様の成道会を迎えます。自分以外の様々な命に敬いと思いやりの心を持ち、今年最期の一ヶ月を優しく丁寧に過ごさせていただきましょう。

2023/11/25

 

 

2023-11-25

園長からのひとこと【2023/11】

朝夕に肌寒さを感じるようになり、秋の季節が深まってきました。先日の運動会では、小学校の体育館という慣れない環境の中でしたが、子ども達の大きく成長した姿を保護者の皆様と一緒に喜べる時間がもてました。様々なお願いにも快くご協力くださり、まことにありがとうございました。

さて、先日、お寺の向かいの畑に植えられているフジバカマの花に、アサギマダラという珍しい蝶々が遊びに来てくれました。保育園の子ども達も、フジバカマの周りをヒラヒラと飛び回るアサギマダラの姿に目を輝かせていました。年長組の子ども達に、「あの蝶々は、外国から海を渡って飛んできたかもしれないよ」と教えてあげると、口々に驚きの声をあげていました。

アサギマダラは、海を渡る蝶々として有名です。日本国内を移動するものもいれば、海を渡り、台湾や中国大陸まで2000キロ以上移動するものも発見されているそうです。10センチに満たない小さな虫が、2000キロもの距離を旅するとは驚きです。命が持つ不思議な力に、ただただ感動するばかりです。

親鸞さまのお言葉の中に「邪見憍慢(じゃけんきょうまん)の悪(あく)衆生(しゅじょう)」というものがあります。真実を歪(ゆが)め、本当のことをまともに見ようとせず、偉そうに他の命を見下し、自分以外のものを傷つけていく悪い人間という意味です。私達は、ついつい、虫や草花、動物などを、人間よりも劣った命として見てしまいがちです。しかし、本来、命というものは、どんなものにも人間には計ることの出来ない輝きがあり、不思議としか言いようのない感動が溢れているのではないでしょうか。小さな虫にも目を輝かせていける子ども達の心は、とても素敵なものです。

秋の深まりの中、子ども達が持つ素敵な心に共感し、様々な命の息づかいを一緒に喜んでいける大人でありたいものですね。

2023/10/29

 

2023-10-29

園長からのひとこと【2023/10】

残暑が続く中にも、少しずつ秋の訪れを感じるようになりました。今年は、工事中のため、興進小学校の体育館での運動会となります。異なる環境の中でも、一生懸命頑張る子ども達の姿が、保育園を彩ってくれています。

さて、今年の中秋の名月は、9月29日でした。最も、お月様が美しく輝いた日です。月の明かりというのは、太陽の強い光とは違い、私達の心にほっとした安らぎを与えてくれます。しかし、月は、月そのものの力で美しく輝くことは出来ません。真っ暗な夜に、太陽の光を受けて、はじめて美しく輝くことができるのです。
私達も、月のようなものではないでしょうか。太陽のように、強い光で様々なものを輝かせていく人も世の中にはいることでしょう。しかし、多くの人は、様々なものの輝きに照らされて、はじめて輝くことができるのではないでしょうか。

人が輝くというのは、その人を輝かせる様々な働きがあってのことでしょう。子ども達も、ご家族の方やお友達、先生方、様々な人々の輝きに照らされて、キラキラと輝いていけるのだと思います。

真新しい新園舎の環境に喜びいっぱいの子ども達ですが、工事中の限られた環境の中で運動会の練習に取り組むことは、本当に大変なことだと思います。そんな中でも、きっと、周りの方々の光をいっぱいに受けて、月のように多くの人々の心に感動を与える輝きを見せてくれることと思います。今年も、様々な制限がある運動会となりますが、子ども達に温かい応援をよろしくお願いします。

2023/9/29

 

2023-09-29

園長からのひとこと【2023/09】

暑かった夏も、間もなく終わりを迎えようとしています。秋には興進小学校での大運動会も予定しています。変わっていく日々の中で、今を輝かせながら成長していく子ども達の姿が、今から楽しみです。

さて、いよいよ新園舎が完成します。それとともに、45年間もの間、多くの仏の子ども達を育んできた現園舎とお別れです。昔、ある建築家の方から「建物というのは、年数が経つと、そこで過ごしてきた人々の想いが染みつき、その建物にしか出せない雰囲気をまとうようになるのです。」と聞かせていただいたことがあります。現園舎は、嘉川保育園にしか出せない雰囲気をまといながら、その役割を終えていきます。そして、新園舎が、その役割を引き継いでいくのです。

新園舎の設計監理を請け負ってくださった日比野設計は、これまで、日本全国で560ヶ園以上の保育園や幼稚園を手がけてこられている幼児施設専門の設計監理会社です。担当してくださった設計士さんの言葉が印象的でした。「園舎に無駄な色は必要ないと思っています。園舎の色は、子ども達がつけていくものですから。」まっさらな新園舎に、子ども達が、今からどんな色付けをしてくれるのか、本当に楽しみです。そして、子ども達や私達と一緒に、新園舎も様々な色をつけながら成長していくことでしょう。
み仏様のあたたかいお心の下、新園舎の環境の中で、子どもも大人も、みんな笑顔になれるような保育園を目指して、引き続き保育に取り組んでいきたいと思います。どうぞ、今後とも、あたたかいご支援とご協力をお願いいたします。

2023/8/30

 

2023-08-30

園長からのひとこと【2023/08】

いよいよ暑い夏の季節を迎えました。今年も、猛暑の日々が続きそうですが、夏ならではの様々な景色を楽しみながら、一日一日を大切に過ごしていきましょう。

さて、以前、ある仏教の先生から「事実と意味」ということについて、お話を聞かせていただいたことがありました。私達は、日々、様々な事実を目の当たりにして暮らしています。しかし、人生は、経験する事実だけで作り上げられるのではなく、それぞれの人生は、意味によって彩られていくというのです。

今年も暑い夏の季節を迎えたという事実は、誰もが同じように目の当たりにしていくものです。しかし、その暑い夏の季節の中に味わっていく意味は、人によってそれぞれ違うものです。ただ暑くてしんどくなるだけの意味を味わっていく人もいれば、暑い中にワクワクするような意味やキラキラしていく意味を味わっていく人もいることでしょう。事実が大切なのではなく、そこにどんな意味を味わえるのかが大切なことなのです。

それぞれの日々は、それぞれの心が彩っていくものなのでしょう。建設中の新園舎も形が見えてきました。今の園舎で過ごす最後の夏でもあります。暑い中にも、ワクワクやキラキラしたものをたくさん味わえる素敵な夏にしていきましょう。

2023/7/28

 

2023-07-28

園長からのひとこと【2023/07】

雨に濡れた紫陽花の美しさが、心和ます季節になりました。田んぼで鳴くカエルの声も、梅雨の季節の到来を告げています。

雨の多い梅雨の季節が明けると、いよいよ暑い夏の季節がやってきます。数年前、暑い夏の季節に、池一面に咲き誇る薄いピンク色をした蓮の花を見たことがありました。とても美しい風景でした。夏の花といえば、ヒマワリなどが有名ですが、蓮も夏の季節に咲く代表的な花です。

この蓮の花は、古来より仏教でとても大切にされてきました。それは、蓮の花が泥の中に咲くからです。泥というのは、汚いものの象徴です。しかし、その汚い泥が、あの美しい蓮の花を咲かせていくのです。命を輝かせていくのは、けっして綺麗なものばかりではありません。むしろ、悲しみや苦しみの中にこそ、命を輝かせていく大きな力が秘められているのではないでしょうか。

人が避けようとする汚いものの中にこそ、大切な意味が込められていることを、美しい蓮の花は教えてくれています。楽しいことばかりでなく、悲しいことや辛いことも経験する中に、人としての輝きも具わっていくのでしょう。

子ども達が経験する悲喜こもごもの一つ一つを、大切にしてあげられる大人でありたいですね。

2023/6/28

 

2023-06-28

園長からのひとこと【2023/06】

新緑が美しい季節になりました。これから梅雨の季節を迎えます。雨の季節ならではの美しさや楽しみも、子ども達と一緒にたくさん見つけていきたいと思います。

先日、5月21日は、親鸞さまのお誕生日でした。今年は、親鸞さまがご誕生されて、ちょうど850年の節目の年になります。

親鸞さまと同じ年に生まれられた明恵(みょうえ)さまという僧侶の方が「我、長命なるものや」という言葉を残されています。「私は、ありがたいことに長生きをさせていただいた」という意味の言葉です。なんと、この言葉は、明恵さまが12歳の時に残された言葉なのです。今から850年前、12歳まで当たり前に育つことが、どれほど難しいことであったかが、明恵さまの言葉から想像されます。

現代の日本に生きる私たちにとっては、生まれてきて生きていることは、当たり前のことのように受け止めています。しかし、本来、生まれ生き育っていくことは、決して普通のことではなく、感動すべきありがたいことなのでしょう。

今、多くの恵みの中で、こうして生かさせていただいていることの尊さをお互いに味わいながら、子どもの育ちを丁寧に受け止めていく日々を大切にさせていただきましょう。

2023/6/1

 

2023-06-01

園長からのひとこと【2023/05】

満開の桜の花もすっかり散り、鯉のぼりがあちらこちらで泳ぐ季節になりました。保育園では、新しい年度がスタートし、一ヶ月が経とうとしています。新入園の子ども達にも、素敵な笑顔が見られるようになりました。

さて、先日は、新園舎の上棟式が行われました。お餅とお菓子でいっぱいの袋を持った笑顔溢れる子ども達の姿が、上棟式を素敵に彩ってくれました。

昨年の11月23日から本格的な工事が始まりましたが、鉄骨を組み上げるまでの基礎工事に約4ヶ月もの月日を要しました。基礎工事が完了し、鉄骨の組み方が始まると、わずか上棟式までは二週間程度でした。立派な建物を建てるには、普段は目に見えない基礎をしっかり作る必要があるということでしょう。基礎がしっかりしていれば、建物はいくらでも修繕して使い続けることができます。

人の育ちも同じ事が言えるように思います。人生には、思い通りにいくことばかりではありません。必ず悲しみを抱えたり、時には、つまずいていくこともあるでしょう。しかし、子ども時代の基礎がしっかりしている人は、必ず立ち直り、再び歩み始めることができるのではないでしょうか。

人間の基礎を作っていくのは、手間も暇も惜しむことのない周りの人々の深い愛情だと思います。深く愛されて育った人間には、揺らぐことのないしっかりとした人間の基礎ができていくはずです。忙しい中にも、子どもを愛おしく思う心を大切に、愛情深い日々をお互いに過ごさせていただきましょう。

2023/5/1

 

2023-04-27