短い秋が終わりに近づき、急に冬の気配を感じるようになりました。感染症の流行も心配されます。体調に気をつけながら、寒い冬の季節を楽しみましょう。

 さて、連日、日本各地でクマによる人身被害のニュースが報道されています。4月~10月までに被害者は196人にのぼり、死者は13人と平年の倍以上の被害件数だということです。主に東北地方での被害が多いようですが、山口市内においてもクマの目撃情報が報道され、他人ごとではない状況になってきています。

 人間社会の安全を守るためには、クマの命を殺めることも選択していかなければなりません。しかし、これは、当たり前のことではなく、悲しいことなのです。報道では、クマの命を殺めることを「駆除」という言葉で表現しています。この言葉を聞くたびに、人の冷酷さを感じ、いたたまれない気持ちになります。「駆除」という表現には、邪魔者を追い払ったという意味だけが強調され、命を殺めざるをえなかった人としての心の痛みは隠れています。

 「邪魔者なら殺してもいい」という道理を、仏教では邪見といい、そのような物の見方を強く戒めています。この世界に生きるに値しない命など一つとしてないことを、お釈迦様は、教えてくれています。どんな命も深い慈しみの中にあるのです。殺めざるをえない中に、悲しみを感受できる心を持つことが、本当の人間らしさではないでしょうか。

 まもなく、どんな命も同じく尊いことを教えてくださったお釈迦様の成道会を迎えます。自分以外の様々な命に敬いと思いやりの心を持ち、今年最期の一ヶ月を優しく丁寧に過ごさせていただきましょう。